第2回で覚えたのは「伝える型」でした。今回は「考えさせる型」です。答えを先に求めるのではなく、段取りを言わせ、自分で批判させ、採点させる。それだけで、出てくるものの質が変わります。
案内役はこの子、うごく君。つまずきやすいポイントを、先回りして教えます。読むだけでは変わりません。でも、この記事の型を1回使うだけで、次のような差が出ます。
おかえりなさい、うごく君です。第13回で会社の土台ができましたね。今回は個人の技術に戻ります。テーマは「AIに考えさせる」。難しそうに聞こえるけど、やることは人に相談するときと同じなんだ。この記事を上から10分やり切ると、次の状態になります。
人が良い仕事をするときも、同じ順番を踏んでいます。
いきなり書き始めさせない。先に方針を言わせるだけで、大きな手戻りが消えます。
ここは従来どおり。段取りが決まっていれば、質は自然に上がります。
ここが今回の肝。作った本人に批判させると、抜けが驚くほど見つかります。
パソコンが得意でない方でも、上から順に進めるだけで終わるように作りました。所要時間の目安は合計10分です。
高度なプロンプトの正体は、「AIに、一人で会議をさせること」です。企画する人、反対する人、まとめる人。人間の会議で質が上がる理由と、まったく同じ仕組みを、1つの指示の中に作ります。難しい呪文は、一切要りません。
※この回の型は時間がかかります(1回の応答が長くなります)。日常の8割は、第2回の3行プロンプトで十分です。判断が絡む場面だけに使ってください。使いどころの一覧は、記事の後半にあります。
性能の問題ではなく、聞き方の構造の問題です。
「良い企画を考えて」と聞けば、もっともらしい企画が返ってきます。弱点や反対意見は、聞かれていないので出てきません。人間の部下でも同じです。「問題点も言って」と言わなければ、言いにくいことは出てこない。それだけの話です。
長い文章が生成されてから「方向が違う」と気づくのが、いちばん時間の無駄です。先に段取りを3行で言わせるだけで、方向確認が10秒で済みます。人に仕事を頼むときも、走り出す前に方針を聞くのと同じです。
これらの型は時間がかかります。日常のメール返信や簡単な要約に使うと、かえって遅くなる。「間違えると影響が大きい」「判断が絡む」場面だけに使ってください。価格改定、新規事業、大きな契約、採用方針——こういう場面です。
採点させると精度は上がりますが、AIが自分で気づけない誤りもあります。とくに事実関係と数字は、自己評価では見つかりません。「考えの抜け」はAIに、「事実の誤り」は人が——この分担で使ってください。第5回の裏取りは、ここでも必要です。
全部を今日やる必要はありません。まずレベル1、慣れたらレベル2。レベル3は仕組みにする段階です。
1行足すだけ。手戻りが激減します。これだけでも効果があります。
STEP 1 で解説役割を分け、採点させ、直させる。ここで別物になります。
STEP 2〜4 で解説考えさせる設計を、誰でも呼び出せる状態に。第12回とつながります。
STEP 5・6 で解説今日いちばん簡単で、いちばん効果がある型です。1行足すだけで、手戻りが激減します。
〔依頼内容〕
書き始める前に、次の3点を先に教えてください。
1. どういう構成で書くつもりか(見出しレベルで)
2. 何を根拠にするか
3. あなたが判断に迷っている点、私に確認したいこと
私が「進めて」と答えてから、本文を書いてください。
ここがこの記事の山場です。1つのAIに、複数の役を演じさせます。企画する人と、反対する人を分けるだけ。人間の会議で質が上がる理由と、まったく同じ仕組みです。
次のテーマについて、3つの役を順番に演じて検討してください。 【テーマ】〔来期、◯◯を値上げすべきか〕 【前提】〔群馬県/従業員20名/建設業/主要取引先は3社〕 ■ ①提案役として 実行案を3つ挙げ、それぞれの狙いと期待できる効果を書いてください。 ■ ②批判役として ①の各案について、弱点・見落とし・失敗する条件を3つずつ挙げてください。 遠慮はいりません。とくに〔取引先の反応・現場の負担〕の観点から厳しく。 ■ ③まとめ役として ①②を踏まえて、当社が取るべき案を1つ選び、理由を書いてください。 あわせて、その案を実行する前に必ず確認すべきことを3つ挙げてください。
「もっと自社らしく」を言葉で説明するのは、ほぼ不可能です。実例を見せるほうが、10倍速く正確に伝わります。第12回でGemに実例を添えたのと、同じ原理です。
良い例だけでは、なぜ良いのかが伝わりません。悪い例と、その差の理由を添えると、初めて基準として機能します。
これから〔求人原稿〕を作ってもらいます。 その前に、当社の基準をお伝えします。 【良い例】 〔過去にうまくいった原稿を貼り付け〕 【良くない例】 〔反応が悪かった原稿を貼り付け〕 【この2つの違い】 〔良い例は1日の流れが具体的。良くない例は形容詞ばかり〕 まず、私が挙げた「違い」以外に、この2つの差として あなたが気づいた点を3つ挙げてください。 そのうえで、同じ基準で新しい原稿を作ってください。
第2回でも触れた型の、完全版です。採点基準を先に決めておくのが違い。基準が無い採点は、ただの感想になります。
〔依頼内容〕 【採点基準】(合計100点) ・〔読み手が次の行動を取れるか〕……25点 ・〔根拠となる数字に出典があるか〕……25点 ・〔当社の状況に即しているか〕……25点 ・〔A4一枚に収まっているか〕……25点 作成後、上の基準で自己採点し、減点理由を挙げてください。 そのうえで90点以上になるよう直し、 「どこをどう直したか」を最後に3行でまとめてください。
最後のひと押しです。人もAIも、自分の結論を補強する情報ばかり集めてしまいます。それを止める一言を用意しておきましょう。
いまの結論について、次の3点を答えてください。 1. この結論に反対する立場の、最も強い主張は何ですか 2. 私が置いている前提のうち、間違っている可能性が高いものはどれですか 3. この案が失敗するとしたら、原因として考えられる上位3つは何ですか 該当がない場合は「なし」と答えてください。無理に挙げないでください。 また、あなたが確信を持てない部分があれば、正直に教えてください。
最後の1分です。今回の型は長くて、毎回書くのが面倒です。だからこそ、Gemにする価値があります(第12回)。
【役割】あなたは当社の意思決定をサポートする検討役です。
【目的】経営判断に必要な材料を、偏りなく揃える
【手順】相談を受けたら、必ず次の順で答えてください。
1. まず確認:前提として不足している情報があれば、先に質問する
2. 提案役:実行案を3つ、狙いと期待効果つきで
3. 批判役:各案の弱点・失敗する条件を3つずつ(遠慮しない)
4. まとめ役:推奨案と理由、実行前に確認すべきこと3つ
5. 最後に:この結論に反対する立場の、最も強い主張
【条件】〔当社は群馬県・従業員20名・建設業〕を前提にすること
【禁止】
・数字を推測で書かない。出典が示せないものは「要確認」と明記
・当たり障りのない指摘で済ませない
・私に同意することを目的にしない
全部を毎回使う必要はありません。日常の8割は第2回の3行で十分です。
| 場面 | 使う型 | かかる時間 | 解説回 |
|---|---|---|---|
| 日常の依頼・返信・要約 | 3行プロンプト | 10秒 | 第2回 |
| 長い文書を書かせる | 段取りを先に | +30秒 | STEP1 |
| 企画・戦略・投資判断 | 一人会議 | 2〜3分 | STEP2 |
| 品質を毎回そろえたい | 実例+採点基準 | 初回3分・以降は0 | STEP3・4 |
| 大きな決断の前 | 反証と前提の検証 | 1分 | STEP5 |
| 繰り返す検討業務 | Gemに昇格 | 初回10分・以降は0 | 第12回 |
この回の効果は手戻りの削減と判断の質に出ます。中小企業の現場でよく見る目安です(内容により変動します)。
| よくある業務 | 普通に頼んだ場合 | 考えさせた場合 | 月あたり |
|---|---|---|---|
| 長文資料の作成(月6本) | やり直し2回・50分 | 1回・25分 | ▲2.5時間 |
| 企画・提案の検討(月4件) | 会議で差し戻し・120分 | 事前に論点整理・50分 | ▲4.6時間 |
| 価格・条件の判断(月2件) | 60分+後日の手戻り | 30分 | ▲1.0時間 |
| 採用・広報の原稿(月3本) | 基準が曖昧で往復4回 | 往復1回 | ▲1.5時間 |
ただしこの回の本当の価値は、時間ではありません。会議で指摘される前に、自分で弱点に気づけること。差し戻しが減り、判断が速くなる。経営に近い仕事ほど、効き方が大きくなります。
研修の現場で、実際によく見る順に並べました。心当たりがあるものから直してください。
まずこの中から、いま迷っている判断を1つ選んで投げてみてください。
自立型AIは、指示された手順ではなく、目的から自分で段取りを組み立てます。つまり今回のSTEP1〜STEP5は、エージェントが内部でやっていることそのもの。この型を理解している人は、エージェントへの指示も自然にうまくなります。
自立型AIに渡すべきなのは、手順ではなく「合格条件」と「疑ってほしい観点」です。第2回のゴール先行型に、今回の批判役・採点基準・反証を足したものが、そのままエージェントへの発注書になります。ここまで書ける人は、AIが賢くなるほど強くなります。
自己採点で見つかるのは「考えの抜け」まで。事実の誤り・存在しない出典は、一次情報で人が確認してください。
基準を教えるための実例は、顧客名・原価・個人情報を伏せて一般化してから使ってください。
AIは論点を出す道具です。法令・税務・契約・人事の判断は、専門家の確認を含めて人が行ってください。
「私に同意することを目的にしない」と明記してください。うなずくだけの相談相手には、価値がありません。
読んだだけだと、たいてい3日で忘れます。3問だけ答えて、記憶に固定してから閉じてください。
選ぶだけ。すぐに答えと解説が出ます。
1回あたり10〜15分、上から順に積み上がる設計です。整える→頼む→読ませる→書かせる→調べる→作る→任せる→広げるの順で進みます。
| 回 | テーマ | この回で手に入るもの | 時間 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | Geminiの基礎 | Googleとつながったワークスペース | 15分 |
| 第2回 | 伝わる頼み方 | 材料を名指しするプロンプトの型 | 10分 |
| 第3回 | ドライブ横断の資料分析 | 探さずに、まとめて要点化する | 15分 |
| 第4回 | Gmail連携のメール術 | 受信トレイを離れずに返信を終える | 10分 |
| 第5回 | Deep Research | 出典つき調査レポートと、裏取りの手順 | 15分 |
| 第6回 | スプレッドシート分析 | 関数を書かずに集計・グラフ化 | 10分 |
| 第7回 | 画像・動画の制作 | POP・バナー・短尺動画の内製化 | 15分 |
| 第8回 | 会議の準備と議事録 | カレンダー連携と、録音→決定事項 | 10分 |
| 第9回 | タスク自動化 | 定型処理を書かせて消す | 15分 |
| 第10回 | Canvas | 会話ではなく“編集画面”で仕上げる | 10分 |
| 第11回 | Gemini Notebook | 自社資料だけで答える社内辞書 | 15分 |
| 第12回 | Gemの量産 | 役割ごとのAI担当者を並べる | 10分 |
| 第13回 | Workspace展開 | チーム全員の標準にする設定と権限 | 15分 |
| 第14回 | 高度なプロンプト(この記事) | 自分で考えさせる指示の組み立て | 10分 |
| 第15回 | フルワークフロー | 1〜14をつないだ完全AI自動化システム | 15分 |
| 番外編 | 総括/セキュリティ | 情報漏洩・コンプライアンス・社内規程の型 | 15分 |
合計 約190分(+番外編15分)。次回はいよいよ最終回、第1回から第14回までをつないで1本の流れにします。ここまで積み上げたものが、1つの仕組みになります。
上のチェックを埋めていくと、進み具合がここに出ます。全部でなくて大丈夫。1つでも実際にやった人から、確実に変わっていきます。
この記事を閉じる前に、いま迷っている判断を1つ選んで、STEP2の一人会議にかけてみてください。それだけで第14回は合格です。批判役の指摘の中に、「言われてみればそうだ」が1つでもあれば、この10分の元は取れています。次はいよいよ最終回、「1〜14をつないだ完全AI自動化システム」を扱います(所要15分)。
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