106万円の壁撤廃、労基法40年ぶり改正の再燃、過去最大級の最低賃金。顧問先からの質問が増える年こそ、AIが効きます。パソコンが苦手でも大丈夫。今日から動ける10の使い方を、費用対効果と注意点まで見える化しました。
案内役はこの子、うごく君。社労士業務ならではの「やってはいけない使い方」も先回りして教えます。「AIに社労士の仕事が奪われる」——もうその議論は終わりました。2026年に勝負が分かれるのは、AIを使って"顧問先に先回りできる事務所"かどうか。この記事を上から読むだけで、こうなります。
全部を一気にAI化しようとすると失敗します。「効く層」から順に手を付けるのがセオリーです。
電子申請が主戦場。AIは「申請そのもの」より前工程(データ整形・チェック・不備検知)で効きます。単価は下がる一方の領域。
就業規則・36協定・賃金台帳。AIの得意分野が最も重なる層。ただし最終責任は人。草案10割・点検10割の二段構えで。
独占業務ではないぶん単価を自分で決められる層。1号・2号で浮いた時間をここへ移すのが、AI活用の本当の目的です。
AIで1号・2号業務の時間を3〜5割削り、その時間を3号業務(相談・提案)へ移す。これが2026年の社労士のセオリーです。順番を間違えて「集客だけAI化」すると、受注が増えた瞬間に事務所が壊れます。削る→空ける→攻めるの順で進めてください。
まず前提の共有から。「なんとなく忙しい」ではなく、何が忙しさを作っているかを数字で押さえます。
| 指標 | 最新の状況 | 社労士への意味 |
|---|---|---|
| 登録社労士数 | 46,506人 (2025年8月31日時点・厚労省) | 10年で約1.2万人増。頭数は緩やかに増加=差別化が必須 |
| 開業社労士の割合 | 約53% (24,819人/46,237人・2025年3月末) | 半分は一人事務所クラス。人を増やせない=AIで増やすしかない |
| 106万円の壁 | 2026年10月に撤廃 | 週20時間が唯一の分岐点へ。顧問先全社でパート再判定が発生 |
| 企業規模要件 | 2027年10月から段階撤廃 → 2035年10月に全企業 | 小規模顧問先にも順番に到達。10年続く相談需要 |
| 130万円の壁 | 2026年4月から契約ベース判定 | 扶養認定の考え方が変わる。説明資料の作り直しが必要 |
| 労基法40年ぶり改正 | 2026年通常国会は提出見送り 論点は継続審議 | 連続勤務上限・勤務間インターバル等。「まだ」が「急に」に変わる |
| 最低賃金(2026年度) | 審議が難航中 (現行 全国加重平均1,121円) | 労側は75円要求。賃金表・シフトの再設計相談が秋に集中 |
| 電子申請 | 2025年1月〜 安衛法関連が原則電子化 | 事業場単位で中小にも到達。紙前提の顧問先の駆け込みが続く |
※ 制度の施行時期・内容は政省令や国会審議で変わることがあります。実務判断の際は必ず厚生労働省・日本年金機構の一次情報でご確認ください。
2026年4月・10月、2027年10月……と改正が階段状に続くのが今回の特徴です。1回きりの特需ではなく、10年スパンで相談が発生し続けます。問題は「増えた相談を、今の人数でさばけるか」。
電子申請とクラウド労務ソフトの普及で、1号業務の"作業"に払う金額は下がる一方。ここで粘るほど消耗します。減った分は3号業務(相談・提案・研修)で取り返す設計が必要です。
聞かれてから答える事務所と、改正の3か月前に案内を送る事務所。単価の差はここで生まれます。先回りの発信こそAIが最も得意な仕事です。
一部調査では士業のAI業務利用率はすでに過半に達したとされます。使っている事務所と使っていない事務所の生産性差が、そのまま採用力・単価の差になり始めています。
ここからが本編です。10の使い方それぞれに「手順」「コピペプロンプト」「費用対効果の試算」「注意点」「自律型AIが加わるとどうなるか」を付けました。上から順に、効きやすい順です。
※ 数値は「考え方の型」を示すためのモデル試算です。実際の効果は事務所の規模・顧問先数・現行の運用によって大きく変わります。
最も費用対効果が高いのがここ。厚労省リリースやリーフレットのPDFを読み込ませ、経営者が読める言葉のお知らせに変換します。読むのはAI、判断するのはあなた。
あなたは実務経験20年の社会保険労務士です。 以下の法改正資料を読み、顧問先の経営者向けお知らせをA4一枚で作成してください。 【読者】従業員〔20〕名規模の〔小売業〕の社長(法律用語に不慣れ) 【構成】 ①何がいつから変わるか(3行) ②自社に影響が出る可能性が高い人(具体的な条件で) ③今月やること/来月やること(チェックリスト形式) ④よくある誤解を1つ、Q&A形式で 【条件】専門用語には必ずカッコ書きで説明を付ける/断定できない点は「要確認」と明記する 【資料】 〔ここに公式資料の本文を貼り付け〕
ゼロから書くのではなく、叩き台を数分で出させて、人が削る。加えて「旧規程 vs 新法令」の差分洗い出しは、AIが人間より速く漏れが少ない領域です。
あなたは就業規則の作成実務に精通した社会保険労務士です。 以下の就業規則(抜粋)を読み、次の3点を表形式で指摘してください。 ①絶対的必要記載事項・相対的必要記載事項の観点で不足している項目 ②近年の法改正(育児介護休業法、労働施策総合推進法、安全衛生関係) に照らして追記を検討すべき条項 ③条文どうしで矛盾している箇所 【会社情報】業種〔製造業〕/従業員〔35〕名/ 〔変形労働時間制あり・夜勤あり・副業は届出制〕 【条件】根拠となる法令名と条番号を必ず併記/断定できないものは「要確認」と明記 【規程本文】 〔ここに条文を貼り付け(社名・個人名は伏せる)〕
顧問先からのチャット・メール相談。回答そのものではなく「回答の設計図」をAIに作らせると、返信速度が劇的に上がります。速度は、そのまま顧問契約の満足度です。
あなたは社会保険労務士です。以下の労務相談について、
社労士が顧問先へ返信する前の「検討メモ」を作成してください。
【出力形式】
1. 結論(1〜2行・断定できる範囲のみ)
2. 根拠(法令名・条番号・通達があれば併記)
3. 例外・場合分け(どの事実があると結論が変わるか)
4. 顧問先に追加で確認すべき事実(箇条書き)
5. 返信文案(丁寧語・300字程度)
【重要】確証がない部分は必ず「要確認」と書き、推測で断定しないこと。
【相談内容】
〔社名・個人名を伏せた相談内容を貼り付け〕
助成金は「知っている人が取る」制度。顧問先の情報とAIを組み合わせて、聞かれる前に提案する。ここが3号業務の単価アップに最も直結します。
あなたは助成金申請に強い社会保険労務士です。
以下の【助成金の支給要件】と【企業プロフィール】を照合し、
「◎該当濃厚/△要確認/×非該当」の3段階で判定してください。
【出力形式】判定/理由/不足している要件/確認すべき書類/
顧問先への提案メール文案(250字)
【重要】支給額や要件は年度で改定されるため、根拠が古い可能性が
ある箇所には「要領で要確認」と明記すること。
【助成金の支給要件】
〔公式の支給要領から該当部分を貼り付け〕
【企業プロフィール】
業種:〔 〕/従業員:〔 〕名/うち有期雇用〔 〕名
直近の取組み:〔賃上げ、正社員転換、研修導入 など〕
電子申請そのものはソフトの仕事。AIが効くのはその手前——顧問先から届くバラバラなExcel・手書きメモ・LINEの連絡を、申請できる形に整える工程です。
以下のバラバラな連絡内容を、資格取得手続きに必要な項目の
表に整形してください。個人が特定できる情報は伏せたまま扱ってください。
【必要項目】雇用形態/入社日/所定労働時間(週)/月額賃金/
雇用契約期間/学生区分/扶養の有無
【出力】
①整形後の表
②不足している項目のリスト
③顧問先への確認メール文案(丁寧語・箇条書き・150字程度)
【元データ】
〔メール本文やメモをそのまま貼り付け〕
士業の集客は「専門性が伝わる情報を、継続して出せるか」がすべて。1本の改正ネタを7つの形に変換するのが、AI時代の発信のセオリーです。
「毎回ネタを探す」から「1つのネタを使い切る」へ。発信が続かない原因の9割は、ネタ切れではなく変換の手間です。
以下の労務トピックを、次の7つの形に書き分けてください。
①ブログ記事の構成案(H2見出し5つ+各200字の要約)
②顧問先向けメール(丁寧語・300字)
③X(旧Twitter)投稿3案(各130字以内・1案は数字を主語に)
④Instagram用の10枚スライド構成(1枚1メッセージ)
⑤セミナー資料の目次(30分・全10ページ)
⑥動画(YouTube)の冒頭30秒台本
⑦経営者が思わず相談したくなる「問いかけ」5案
【トーン】不安を煽らず、事実ベースで。数字は必ず出典を明示。
【読者】従業員10〜50名の中小企業の経営者
【トピック】〔例:2026年10月からの社会保険適用拡大〕
顧問先訪問や労使面談。録音 → 文字起こし → 議事録 → ToDoまでを自動化すると、「対応したのに記録がない」という3号業務の最大の弱点が消えます。
以下の面談の文字起こしを、社労士事務所の面談記録に整形してください。
【出力】
①決定事項(箇条書き)
②当事務所のToDo(担当・期限つき)
③顧問先側のToDo(担当・期限つき)
④次回までの検討課題
⑤法令上、追加で確認が必要と思われる論点(社労士向けメモ)
⑥顧問先へ送るお礼メール文案(丁寧語・200字)
【条件】固有名詞は「A社」「担当者様」等に置き換えて出力すること。
【文字起こし】
〔ここに貼り付け〕
社労士がいちばん苦手なのが値上げ交渉。AIは「相手が納得する説明の順番」を組み立てるのが得意です。感情ではなく構造で伝える資料を作りましょう。
あなたは価格交渉に強い経営コンサルタントです。
社労士事務所が顧問先へ顧問料改定を申し入れる際の説明資料を作ってください。
【出力】
①この1年で増えた業務量を可視化する表(項目/従来/現在)
②改定が必要な理由を、値上げ側の都合でなく「顧問先の利益」で説明する文章
③3案の提示(A:現状維持で範囲を限定/B:改定して現行サービス継続/
C:上位プランで対応範囲を拡張)
④想定される反論5つと、それぞれへの誠実な返答例
⑤面談で使う1ページ要約
【トーン】誠実・具体的・脅さない。数字は【 】で空欄にして、後から埋められる形に。
【前提】〔顧問先の業種・規模・現在の顧問料・増えた業務内容〕
「所長にしか分からない」が事務所の成長を止めます。頭の中にある手順を、AIに引き出させて文書化する。これが一人事務所から抜け出す最短ルートです。
以下は、社労士事務所の所長が業務手順を口頭で説明したメモです。
入所半年の職員が一人で実行できるマニュアルに整形してください。
【出力】
①目的と完了条件(何ができたら終わりか)
②準備するもの
③手順(番号つき・1手順1動作・迷いやすい分岐は「もし〜なら」で明記)
④よくあるミスと防ぎ方
⑤所長に確認すべきタイミング(勝手に判断してはいけない場面)
⑥理解度チェック問題5問(解答付き)
【条件】暗黙の前提があれば「※前提:〜」として補い、
説明が足りない箇所は質問として最後にまとめること。
【元メモ】
〔音声入力した内容をそのまま貼り付け〕
手続きの副産物として、あなたの手元には他の誰も持っていない労務データがあります。残業時間、有休取得率、離職率、年齢構成——これを分析して返すと、顧問料は"手続き代"ではなくなります。
あなたは人事労務に強い経営コンサルタントです。
以下の集計データ(個人が特定できない形に加工済み)を分析し、
経営者向けレポートを作成してください。
【出力】
①現状サマリー(数字を3つだけ挙げて言い切る)
②気になる兆候と、その労務リスク(法令リスク/人材流出リスク)
③放置した場合に想定されるコスト(考え方も明記)
④打ち手3案(すぐできる/半年/1年)と各案のメリット・デメリット
⑤経営者への問いかけ3つ
【条件】数字の断定は与えられたデータの範囲内に限る。
推測が入る箇所は「仮説」と明記すること。
【データ】
月別平均残業時間:〔 〕
有休取得率:〔 〕/離職率:〔 〕/年齢構成:〔 〕
全部やろうとしないでください。「難易度が低く、効果が出るのが早い」順に並べ替えたのがこの表です。まずは上から3つで十分です。
| 活用術 | 難易度 | 効果が出るまで | 月あたり効果(試算) |
|---|---|---|---|
| ①法改正の1枚化 | 易 | 即日 | 約16,000円 |
| ③相談の一次回答 | 易 | 1週間 | 約62,000円 |
| ⑦議事録・ToDo | 易 | 即日 | 約23,000円 |
| ⑥発信の仕組み化 | 中 | 1〜3か月 | 約35,000円+集客 |
| ②規程のドラフト | 中 | 1か月 | 約20,000円/社 |
| ⑤手続きの前工程 | 中 | 1か月 | 約27,000円 |
| ⑨マニュアル・教育 | 中 | 3か月 | 教育コスト数十万円 |
| ④助成金マッチング | 中〜難 | 3〜6か月 | 受任次第で数十万円 |
| ⑧顧問料改定 | 難 | 6か月 | 年72万円規模 |
| ⑩労務データ分析 | 難 | 6か月〜 | 年120万円規模(新収益) |
※ すべてモデル試算です。実際の効果は現行の業務フロー・顧問先数によって変わります。
10選のうち、あなたの事務所・顧問先の構成で最も効くのはどれか。無料のAI化診断で、優先順位の当たりを付けられます。数分・スマホでOKです。
同業の発信を観察すると、反応(コメント・保存・問い合わせ)が集まる投稿は、扱うテーマではなく切り口の型で決まっています。AIに書かせるときも、この型を指定するだけで結果が変わります。
AIは「仕事道具」として構えると続きません。プライベートで先に慣れるのが、実は最短ルートです。生活で使えるようになると、業務での応用が一気に思いつくようになります。
ここまでの活用術は「聞いたら答える」AIの話でした。次に来るのが自分で手順を考えて、複数の作業を連続でこなす自律型AI(AIエージェント)です。社労士業務との相性は、正直に言って非常に良い。ただし危険も比例して大きくなります。
| 場面 | 今までのAI | 自律型AIが加わると |
|---|---|---|
| 法改正対応 | 聞けば要約してくれる | 毎朝監視し、影響顧問先を特定して下書きまで用意 |
| 手続き業務 | データ整形を手伝う | 受信→抽出→起票→不足の確認連絡までを連続実行 |
| 労務相談 | 回答案を出す | 過去の回答を参照し、事務所の言い回しで一次対応 |
| 助成金 | 要件を照合する | 公募開始を検知し、該当顧問先へ提案案を自動作成 |
| 顧問先管理 | 依頼した分析をする | 36協定・有休5日などの未達を常時監視しアラート |
| 事務所経営 | 資料を作る | 採算・稼働・受注状況を毎月まとめて経営会議の資料に |
パソコンが得意でなくても大丈夫。1日15分、順番どおりに進めるだけの設計です。
士業のプロンプトには、一般的な4要素に加えて「根拠」と「不確実性の扱い」を必ず入れます。ここが素人との差です。
あなたは実務経験20年の社会保険労務士です。 〔だれ〕向けに、〔してほしいこと〕を作ってください。 【形式】〔表/箇条書き◯個/◯字〕 【トーン】〔丁寧に/専門用語は言い換えて〕 【根拠】法令名・条番号を必ず併記すること 【禁止】記憶に頼った断定。確証がない部分は「要確認」と明記 【前提】以下に貼り付けた資料の範囲内でのみ回答すること 【資料】 〔公開情報を貼り付け/個人情報・社名は伏せる〕
ここは飛ばさずに読んでください。社労士がAIを使ううえで、事故になりうるポイントを7つに整理しました。
社労士法第21条の守秘義務は、AIを使ったから軽くなるものではありません。顧問先の情報を外部サービスへ入力する行為そのものが、取扱いとして適切かを常に問う必要があります。
氏名・生年月日・住所・給与額・傷病名・マイナンバー。これらは伏せ字か「A社の従業員B」で足ります。とくにマイナンバーは法律上、取扱いが厳格に制限されています。
個人向けの無料プランを業務で使うのは避けましょう。学習利用のオフ設定、管理者による利用状況の把握、契約上のデータ取扱い条項が揃ったプランを選んでください。
AIは実在しない条番号や通達名を、自信たっぷりに作ります。引用したものは一つ残らず、e-Govや厚労省サイトで存在を確認してから使ってください。
AIの出力に誤りがあっても、責任を負うのはあなたです。「AIがそう言った」は通用しません。逆に言えば、その判断こそが社労士の報酬の源泉です。
職員が個人アカウントで顧問先情報を入力する事態を防ぐには、明文化しかありません。「使ってよいツール/入れてよい情報/禁止事項」を1枚にして共有を。
「AIを使っているのか」は今後必ず聞かれます。どこに使い、どこに使っていないかを説明できる状態にしておくと、逆に信頼につながります。
判断に迷う情報は、入れないのが正解です。入れずに済ませる工夫(匿名化・構造だけ相談する・自分で書く)を先に考えてください。
優劣ではなく得意分野の違いです。まずは1つで十分ですが、使い分けを知っておくと精度が上がります。
| やりたいこと | ChatGPT | Claude | その他 |
|---|---|---|---|
| 迷ったとき・まず試す | ◎ 最初の一台 | ○ | — |
| 長い通達・PDFの要約 | ○ | ◎ 大の得意 | NotebookLM も強い |
| 規程・文書の推敲 | ○ | ◎ 自然な日本語 | — |
| データ集計・表づくり | ◎ ファイルを渡すだけ | ○ | Excelと併用 |
| 最新情報の調べもの | ◎ | ○ | Perplexity も選択肢 |
| 複数資料の横断参照 | ○ | ○ | ◎ NotebookLM |
| スマホでの使い心地 | ◎ | ○ | — |
ひとことで言えば——調べるならChatGPT、読ませるならClaude、束ねるならNotebookLM。最後の法令チェックだけは、絶対に人の仕事です。
社労士事務所も、顧問先の中小企業も。「何から始めれば」で止まっている方へ、まずは無料のAI化診断から。Googleフォームで数分、あなたの現場に合うAIの使いどころが見えてきます。