残り 15
Gemini実践シリーズ 第11回 | 所要15分

「あの人しか知らない」を、
終わりにする。

Gemini Notebook(旧NotebookLM)は、入れた資料の中だけで答えるAIです。ネットの一般論ではなく、うちのルールで、出典つきで答える。ベテランの頭の中を、誰でも引ける場所に変えられます。

案内役はこの子、うごく君。つまずきやすいポイントを、先回りして教えます。
🏁 結論から言います

この15分を終えると、社内の知識は
「人に聞くもの」から「引けるもの」に変わります。

読むだけでは変わりません。でも、この記事の手順を1回なぞるだけで、次のような差が出ます。

BEFORE / 今のあなた
  • 「これどうするんでしたっけ」がベテランに集中する
  • マニュアルはあるが、誰も探して読まない
  • 新人が同じ質問を、何度も繰り返す
  • AIに聞いても、一般論しか返ってこない
  • その人が辞めたら、業務が止まる
AFTER / 15分後のあなた
  • 質問はノートブックに向かう。ベテランの手が空く
  • 探さなくていい。聞けば該当箇所が出てくる
  • 何度聞かれても、同じ品質で答えが返る
  • 自社のルールに基づいた答えが、出典つきで返る
  • 知識が、人ではなく会社に残る
📌 2026年7月の変更点:NotebookLMは「Gemini Notebook」に名称が変わりました(2026年7月16日発表)。中身は同じ製品で、これまで作ったノートブックも共有リンクもそのまま使えます。社内マニュアルには「Gemini Notebook(旧NotebookLM)」と併記しておくと、混乱を防げます。
うごく君より

おかえりなさい、うごく君です。第10回で「仕上げる」ことを覚えましたね。今回は会社の知識の話です。中小企業でいちばん重い課題って、たいてい「あの人がいないと分からない」なんだ。この記事を上から15分やり切ると、次の状態になります。

  • Notebookが向く場面・向かない場面が分かる
  • 入れる資料の選び方と、入れてはいけないものが分かる
  • 出典つきで聞く型が手に入る
  • 音声や動画にして、新人教育に使える
  • チームで共有する手順と権限が分かる
  • 古くならないための更新ルールができる
30秒でわかる

Notebookは、
ふつうのAIと何が違うのか。

違いは1つだけ。答えの根拠が、どこにあるかです。

🌐

ふつうの会話
= 世界中の知識から

幅広く答えられますが、あなたの会社のルールは知りません。一般論になりがちです。

📚

Notebook
= 入れた資料の中だけから

答えは必ずあなたが入れた資料が根拠。しかも、どのページかを示してくれます。

👥

共有すると
= 全員が同じ答えに

誰が聞いても、同じ根拠で同じ答え。これが属人化の解消そのものです。

GEMINI MASTER | LESSON 11

第11回:Gemini Notebook
― 自社資料だけで答える、社内辞書をつくる ―

パソコンが得意でない方でも、上から順に進めるだけで終わるように作りました。所要時間の目安は合計15分です。

💡 最初にこれだけ

Notebookの品質は、入れた資料の質そのものです。良い資料を入れれば良い答えが返り、古い資料を入れれば古い答えが返ります。AIの性能ではなく、あなたの資料整理が答えを決める——ここが他の回とまったく違う点です。だからSTEP2に、いちばん時間を割いています。

なぜ「マニュアルはあるのに、誰も読まない」のか

問題は、書いてあるかどうかではありません。

POINT 01

読まれないのではなく、探せない

50ページのマニュアルに答えが書いてあっても、どこに書いてあるか分からなければ、無いのと同じです。だから結局、ベテランに聞く。Notebookは、この「探す」工程を消します。聞けば、該当箇所を示して答えてくれる——マニュアルが、はじめて使われるようになります。

POINT 02

「うちのやり方」は、ネットには載っていない

ふつうのAIに「この現場の安全手順は?」と聞いても、一般論しか返りません。当たり前です、あなたの会社のルールを知らないのですから。Notebookは入れた資料の中だけで答えるので、返ってくるのは"うちの正解"になります。しかも出典つきなので、確認もできます。

失敗しないための、たった2つのルール

RULE 01

古い資料は、入れない

Notebookは入れた資料を疑いません。3年前の規程を入れれば、3年前のルールを自信たっぷりに答えます。しかも出典つきなので、余計に信じられてしまう。入れる前に、その資料が現行版かを確認してください。これが最大の事故要因です。

RULE 02

出典があっても、資料が間違っていれば間違う

「出典つき=正しい」ではありません。出典が示すのは「どの資料に書いてあったか」だけです。資料自体が誤っていれば、その誤りがそのまま答えになります。法令・金額・期限に関わる答えは、必ず一次情報でも確認してください。

この記事のゴール:Notebookの使い方にも「3段階」がある

全部を今日やる必要はありません。まずレベル1、慣れたらレベル2。レベル3は組織で使う段階です。

LEVEL 1 / 今日から

自分用の辞書をつくる

手元の資料を集めて、聞ける状態に。まず1つ作るところまで。

STEP 1〜3 で解説
LEVEL 2 / Notebookの本命

教材として配る

音声・動画・図解に変えて、新人教育に使う。ここが差になります。

STEP 4・5 で解説
LEVEL 3 / 組織で使う

会社の資産として維持する

更新ルールを決め、古くならないようにする。ここまでで一周です。

STEP 6 で解説
STEP1
SCOPE / 所要2分
向く場面を、見極める

Notebookは万能ではありません。「同じことを何度も聞かれる」場面に、集中して効きます。まず使いどころを覚えてください。

3つの調べ方の使い分け
知りたいこと使うもの返ってくるもの向いている場面
一般的な知識・アイデアふつうの会話幅広い答え相談・発想
今この資料についてドライブ指定(第3回)その場限りの分析単発の比較・要約
外の相場・他社事例Deep Research(第5回)出典つきレポート調査・判断材料
うちのルール・手順Notebook自社資料に基づく答え+出典繰り返し聞かれること
中小企業で効くノートブックの例
📕 業務マニュアル一式 🦺 安全・法令の社内基準 📋 就業規則・社内規程 🔧 機械・設備の取扱説明書 🏗️ 過去の施工事例・失敗事例 🍽️ レシピ・仕込み手順 💬 よくある質問と回答集
ふつうのAIに聞くと 「うちの高所作業の手順は?」 → 一般的な安全対策の説明 現場では使えない Notebookに聞くと 「うちの高所作業の手順は?」 (自社の安全基準を入れた状態) うちの手順が返る 「作業前に◯◯を確認し、  △△を装着すること」 出典:安全基準書 12ページ
違いは性能ではなく根拠の置き場所。出典が付くので、現場でもすぐ確認できます。
うごく君のひとこと作るノートブックを選ぶ基準はシンプル。「今月、同じ質問を3回以上された話題」。それが最初の1つだよ。全部をまとめようとすると、たいてい完成しないんだ。
STEP2
SOURCE / 所要3分 ★ここで9割決まる
何を入れるかで、答えが決まる

この3分が、この回でいちばん重要です。Notebookは入れた資料を疑いません。だから、入れる前の選別がすべてになります。

入れられるもの
  • Googleドキュメント・スライド・PDF:マニュアル、規程、手順書、仕様書
  • Webページ:自社サイト、行政の公表資料、メーカーの製品ページ
  • YouTube動画:URLを渡すと、内容を扱えます(設備の操作説明など)
  • 音声ファイル:ベテランに口頭で語ってもらった内容を、そのまま資料に
  • 写真・画像:紙の資料を撮影したもの(第3回の応用です)
入れる前の3つのチェック
1
現行版か改訂前の規程、旧料金表、廃止された手順。古い資料は、古い答えを自信たっぷりに返します。ファイル名に版と日付を入れておくのが確実です。
2
矛盾していないか同じテーマで内容が食い違う資料が2つあると、答えも揺れます。どちらが正なのかを決めてから入れてください。
3
入れてはいけないものが混ざっていないか個人情報、他社から預かった秘密情報、社外秘の原価。共有する前提なら、なおさら慎重に。次の警告を必ず読んでください。
📋 入れた資料を、まず点検させる
いま入れた資料について、次を確認してください。
1. 資料どうしで、内容が食い違っている箇所はありますか
2. 日付や版から見て、古い可能性がある資料はどれですか
3. このテーマについて、資料に書かれていない(抜けている)論点は何ですか
4. 個人名・連絡先など、個人が特定できる記述が含まれる箇所はどこですか
該当がなければ「なし」と答えてください。推測で補わないでください。
⚠️ 個人情報と機密の扱いを、先に決めてください
ノートブックは共有すると、中の資料も相手が見られる状態になります。顧客名簿、従業員の個人データ、他社から預かった図面や仕様——これらを入れる前に、社内で線を引いてください。とくに「自分用に作ったものを、あとからチームに共有する」ときが危険です。共有の直前に、中身をもう一度見直す運用にしてください。
うごく君のひとこと「うちにはマニュアルが無い」って会社も大丈夫。ベテランに30分しゃべってもらって、その音声を入れるだけでいいんだ。整った文書じゃなくていい。話し言葉のままで、ちゃんと答えられるようになるよ。
STEP3
ASK / 所要3分
出典つきで、聞く

聞き方のコツは、他の回と同じです。「まとめて」ではなく「取り出して」。ただしNotebookには、もう1つ大事な使い方があります——資料に書かれていないことを見つけることです。

📋 現場で使える聞き方
私は〔入社3か月の新人〕です。専門用語は避けて説明してください。
質問:〔◯◯の作業をするとき、事前に何を確認すればいいですか〕
・手順は番号つきで、順番どおりに
・各手順に、どの資料の何ページが根拠かを添えて
・資料に書かれていないことは答えず、「資料に記載なし」と明記してください
・特に注意すべき点があれば、最後にまとめて
Notebookならではの、3つの聞き方
1
「資料に書かれていないことは?」マニュアルの抜けが見つかります。これがいちばん価値のある使い方かもしれません。改訂すべき箇所が一覧で出ます。
2
「新人がつまずきそうな箇所は?」説明が足りない部分を、AI側から指摘してもらえます。教える側の準備にも使えます。
3
「この資料とこの資料で、食い違いは?」複数の規程・手順書のズレを洗い出せます。改訂の優先順位が決まります。
📋 マニュアルの穴を見つける
入れた資料を、〔入社したばかりの人が読む〕前提で点検してください。
1. 手順は書いてあるが、「なぜそうするか」が書かれていない箇所
2. 前提知識が無いと分からない用語(説明が必要なもの)
3. 例外やトラブル時の対応が書かれていない箇所
4. 資料どうしで食い違っている箇所
それぞれ、どの資料のどこかを示してください。
最後に、改訂すべき優先順位を3つ挙げてください。
⚠️ 出典があっても、鵜呑みにしない
出典が示すのは「どの資料に書いてあったか」だけです。その資料自体が古い・誤っていれば、答えも間違います。法令・金額・期限・安全に関わる答えは、必ず原本と一次情報でも確認してください。とくに人の安全に関わる手順は、AIの答えだけで判断させない運用にしてください。
うごく君のひとこと資料に書かれていないことは、資料に記載なしと明記して」——この一行が命綱だよ。これが無いと、AIが一般知識で埋めてしまって、うちのルールじゃない答えが混ざるんだ。
STEP4
TEACH / 所要3分 ★Notebookの本命
音声・動画にして、教育に使う

ここがNotebookのいちばん面白いところです。入れた資料から、そのまま教材が作れます。読ませるより、聞かせる・見せるほうが定着する場面は多くあります。

作れる教材の形
特徴向いている場面
音声概要対話形式で解説してくれる移動中・作業中に聞かせる
動画概要図解つきで説明新人研修・朝礼での共有
インフォグラフィック1枚の図に整理現場に貼る・掲示物に
よくある質問集Q&A形式で書き出しドキュメントにして配布
理解度クイズ設問と解説研修後の定着確認
📋 新人教育の教材を作らせる
入れた資料をもとに、〔入社1週目の新人向け〕の教材を作ってください。
1. 最初に覚えるべきことを、10項目に絞った一覧
2. それぞれに「なぜ大事か」を一言添える
3. 特に事故につながりやすい注意点を、3つだけ強調
4. 理解度を確認する5問のクイズ(答えと、資料の該当箇所つき)
※専門用語には必ず説明を付けてください。
※資料に書かれていないことは含めないでください。
⚠️ AIが作った教材であることを、伝えてください
音声や動画は、聞くと人が説明しているように感じられます。研修で使うときは「これはAIが資料から作った教材です」と伝え、内容を人が事前に確認してください。とくに安全教育では、間違った手順がそのまま定着すると取り返しがつきません。教材は必ず、責任者が通しで確認してから使う運用にしてください。
うごく君のひとこと音声概要って、移動中の車内で聞けるのが強いんだ。現場に向かう道中に、その日の作業手順を聞いておく。読む時間が取れない業種ほど、ここが効くよ。
STEP5
SHARE / 所要2分
チームで、共有する

自分だけが使っている状態では、属人化は解けません。共有して、はじめて意味があります。ただし共有の前に、必ず確認すべきことがあります。

共有する前のチェック4つ
  1. 中の資料をもう一度見る:自分用に入れたものに、個人情報や機密が混ざっていないか
  2. 共有範囲を決める:特定の人だけか、社内全員か。「リンクを知っている全員」にしていないか
  3. 編集権限を絞る:資料を追加・削除できる人は、限定するのが安全です
  4. 使い方を一言添える:「何を聞ける場所か」を伝えないと、使われません
📋 社内展開のお知らせ文を作らせる
このノートブックを社内に展開するための案内文を作ってください。
・宛先:〔現場スタッフ全員〕
・伝えること:何を聞ける場所か/どんな質問ができるか/注意点
・具体的な質問の例を3つ(実際に使いそうなもの)
・「答えは資料に基づくが、最終判断は人が行う」旨を明記
・300字以内、専門用語なし
うごく君のひとこと案内文に「実際に使いそうな質問の例」を3つ入れるのがコツ。「何でも聞いてください」だと誰も使わないけど、例があると「あ、これ聞いていいんだ」って動き出すんだ。
STEP6
MAINTAIN / 所要2分
古くならないように、する

最後の2分です。Notebookの最大のリスクは、古い情報が生き続けること。しかも出典つきで答えるぶん、余計に信じられてしまいます。ここを設計して締めます。

決めておく4つ
1管理する人を決める

資料を追加・差し替えする担当者を1人決めてください。全員が自由に入れられる状態は、矛盾のもとです。

2差し替えのきっかけを決める

規程改訂時、法令変更時、機械の入れ替え時。「変わったら、その日に差し替える」をルールにしてください。

3ファイル名に版と日付を入れる

「安全基準書_v3_2026-08」のように。どれが最新かが、名前だけで分かる状態にしておくと事故が減ります。

4半年に1回、棚卸しする

入れた資料の一覧を出させて、古いものが残っていないか確認。カレンダーに予定を入れておいてください。

📋 半年ごとの棚卸しテンプレ
このノートブックに入っている資料の一覧を出してください。
それぞれについて、次を教えてください。
1. 資料の名前と、記載されている日付・版
2. 内容から見て、古くなっている可能性がある箇所
3. 他の資料と食い違っている箇所
4. このテーマで、今後追加したほうがよい資料の種類
※日付が記載されていない資料は、その旨を明記してください。
うごく君のひとこと3番の「ファイル名に版と日付」、地味だけど効くよ。人間が見ても、AIが見ても、どれが最新か一目で分かる。第6回の「表の形をそろえる」と同じで、整理そのものがAI活用の土台なんだ。

費用対効果を「時間」で見える化する

この回の効果は「聞かれる側の時間」に出ます。ベテランや管理者の時間が空くのが、いちばん大きな価値です(業務内容により変動します)。

よくある業務これまでNotebook活用後月あたり
「これどうする?」への回答(1日8回)5分(聞く側+答える側)1分▲11.7時間
マニュアルから該当箇所を探す(1日5回)8分1分▲12.8時間
新人研修の資料づくり(月2回)120分25分▲3.2時間
マニュアルの改訂箇所の洗い出し(月1回)90分20分▲1.2時間

📐 かんたんな損益分岐の出し方

合計 約29時間/月
(全員合計)
× 時給2,500円 月あたり
約72,500円分

ただしこの回の本当の価値は、金額では測れません。「その人が辞めたら業務が止まる」状態が解消されることです。属人化は、時間の問題ではなく事業継続の問題です。

⚠️ 数字を出すときの注意
上の「活用後」には、資料を整えて入れる初期の手間(1テーマあたり1〜2時間)は含んでいません。初月はマイナスになります。2か月目以降で回収する、と社内には説明してください。

プロが見ている、初心者がやりがちな7つの落とし穴

研修の現場で、実際によく見る順に並べました。心当たりがあるものから直してください。

1️⃣古い資料を入れたまま使う

  • 古いルールを、出典つきで自信たっぷりに答える
  • 直し方:入れる前に現行版か確認。版と日付を名前に

2️⃣会社の資料を全部入れようとする

  • テーマが散り、答えの精度が落ちる
  • 直し方:テーマごとに1つのノートブック

3️⃣「資料に記載なし」と言わせない

  • 一般知識で埋められ、うちのルールでなくなる
  • 直し方:聞き方に必ずこの一行を入れる

4️⃣出典を根拠に、確認をやめる

  • 資料自体が誤っていれば、答えも誤る
  • 直し方:法令・金額・安全は一次情報でも確認

5️⃣共有前に中身を見直さない

  • 自分用に入れた個人情報が、全員に見える
  • 直し方:共有直前に必ず資料一覧を確認

6️⃣作って終わりにする

  • 半年後には、誰も信用しなくなる
  • 直し方:管理者と更新のきっかけを決める

7️⃣使い方を伝えずに配る

  • 「何でも聞いて」では、誰も使わない
  • 直し方:具体的な質問例を3つ添える

Notebookが効く、局面別の使いどころ

まずこの中から、今月3回以上聞かれた話題を1つ選んで作ってみてください。

🏗️建設・現場で

  • 安全基準・KY活動の社内ルール一式
  • 機械・重機の取扱説明書をまとめて
  • 過去の施工事例と、失敗から学んだ点
  • 元請けごとの提出書類の様式と締切

🏪店舗・飲食で

  • 仕込み手順・レシピ・原価の基準
  • 接客マニュアルとクレーム対応の型
  • 衛生管理の記録ルールと点検項目
  • 多国籍スタッフ向けに、やさしい日本語で

🧑‍💼事務・経営で

  • 就業規則・社内規程のよくある質問
  • 経理処理の社内ルール(勘定科目の判断など)
  • 過去の契約書と、自社の標準条件
  • 補助金の公募要領と、自社の該当要件

ここに「自立型AI」が加わると、何が変わるか

Notebookは「会社の記憶」にあたる部分です。Gemini Spark のような自律型エージェントが仕事を進めるとき、この記憶を参照できるかどうかで、成果物の質が決定的に変わります。エージェントに一般論で仕事をさせるか、うちのルールで仕事をさせるか——その分かれ目がここです。

🔭 いちばん大事な前提

自立型AIを導入する前にやるべきことは、派手な設定ではなく「会社の知識を、機械が読める形で置いておくこと」です。第6回で「表の形」を、第11回で「知識の置き場」を整える。この2つが揃っている会社だけが、エージェントを使いこなせます。逆に言えば、いま整えておけば、次の世代の道具がそのまま使えます。

✅ 任せてよい範囲 向いている
  • 社内ルールの照会への一次回答
  • 新人からの繰り返し質問への対応
  • マニュアルの抜け・矛盾の洗い出し
  • 研修教材のたたき台づくり
  • 資料の棚卸しと、更新候補の提示
⛔ 任せてはいけない範囲 要注意
  • 人の安全に関わる手順の最終判断
  • 法令・税務・労務の解釈の確定
  • 個人情報を含む資料の共有
  • 確認なしでの教材の配布・実施
  • 資料が古いまま放置された状態での運用
うごく君のひとことNotebookって、会社にとっていちばん長く効く投資だと思う。ツールが変わっても、整理した知識は残るからね。今日の15分は、5年後にも効いてるはずだよ。

つまずいたときのチェックリスト

「NotebookLM」で探しても見つからない
2026年7月16日に「Gemini Notebook」へ名称が変更されました。同じ製品で、既存のノートブック・共有リンク・データはそのまま引き継がれています。古いリンクも転送される仕組みです。社内マニュアルには「Gemini Notebook(旧NotebookLM)」と併記しておくと、しばらくの間の混乱を防げます。
資料に書いてあるのに、答えてくれない
考えられる原因は3つ。①資料が画像として保存されたPDFで、文字情報が入っていない ②質問の言葉が、資料の中の表現と違いすぎる ③資料の量が多く、該当箇所にたどり着けていない。②なら、資料で使われている用語で聞き直してみてください。①なら、写真として渡すほうが読める場合があります。
答えが、古いルールになっている
古い資料が残っています。入っている資料の一覧を出させて、旧版を削除してください。これがNotebookで最も多い事故です。予防策は、ファイル名に版と日付を入れること、そして規程が変わったその日に差し替えるルールを決めることです。
答えの内容が、資料と少し違う気がする
出典として示された箇所を、実際に開いて確認してください。多くの場合、複数の資料の内容を組み合わせて要約した結果、ニュアンスが変わっています。「その根拠部分を、資料の文章そのままで引用して」と頼むと、原文が確認できます。安全や法令に関わる内容は、必ずこの確認をしてください。
共有したが、誰も使ってくれない
「使い方が分からない」より「何を聞いていいか分からない」が原因のことが多いです。具体的な質問の例を3つ添えて配り直してみてください。あわせて、ベテランが質問を受けたときに「それノートブックに聞いてみて」と返す運用にすると、一気に定着します。

安全に、かしこく使うために

1入れる資料を選別する

個人情報、他社から預かった秘密情報、社外秘の原価。共有する前提なら、なおさら慎重に。入れる前に線を引いてください。

2現行版だけを入れる

古い資料は、古い答えを出典つきで返します。版と日付をファイル名に入れ、改訂時に差し替える運用に。

3出典を過信しない

出典は「どこに書いてあったか」を示すだけです。法令・金額・安全に関わる答えは、必ず一次情報でも確認してください。

4教材は人が確認してから使う

AIが作った音声・動画は、人が説明しているように感じられます。安全教育ではとくに、責任者が通しで確認してから配布を。

よくある質問

無料プランでも使えますか?
基本的な機能は無料でも利用できます。入れられる資料の数や、音声・動画の生成回数などに、プランごとの上限があります。まず1テーマで無料で試し、社内に広げる段階でプランを検討するのが現実的です。提供内容は変わりやすいため、最新の公式情報をご確認ください。
Geminiアプリの中にも「Notebooks」がありますが、違うものですか?
同じノートブックを、2つの入口から使える形です。Geminiアプリ内のセクションと、独立したGemini Notebookは連携しており、片方で加えた変更がもう片方にも反映されます。じっくり作り込むなら独立版、会話の流れで参照するならアプリ内——という使い分けで問題ありません。
入れた資料は、学習に使われませんか?
扱いはプランと契約形態によって異なります。Google Workspace(法人契約)では、入力内容が学習に使われない扱いが標準です。まず自社の契約形態を確認してください。そのうえで、そもそも入れてよい資料かどうかを社内で決めておくのが、いちばん確実な対策です。
うちにはマニュアルがありません。それでも作れますか?
作れます。ベテランに30分ほど話してもらい、その音声を入れるだけでも、十分に答えられるノートブックになります。整った文書である必要はありません。むしろ、そこからマニュアルを起こすほうが速い。「マニュアルを作ってから」と考えると、永遠に始まりません。
研修として社内に導入する場合、助成金は使えますか?
人材開発支援助成金など、要件を満たせば活用を検討できる制度があります。ただし対象コース・訓練時間・申請時期などの要件は毎年更新されるため、必ず最新の公募要領と、管轄の労働局へのご確認をお願いします。UGOKU AIでは、要件の整理からご相談いただけます。

理解度チェック(3問・1分)

読んだだけだと、たいてい3日で忘れます。3問だけ答えて、記憶に固定してから閉じてください。

🧠 3問クイズ

選ぶだけ。すぐに答えと解説が出ます。

1Notebookの答えの質を、いちばん左右するのは?
正解:入れた資料の質。Notebookは入れた資料を疑いません。3年前の規程を入れれば、3年前のルールを出典つきで自信たっぷりに答えます。しかも出典があるぶん、余計に信じられてしまいます。
2聞き方に必ず入れるべき一行はどれ?
正解:「資料に記載なし」と明記させる一行。これが無いと、AIが一般知識で隙間を埋めてしまい、うちのルールではない答えが混ざります。Notebookを使う意味そのものが失われるので、必ず入れてください。
3作ったノートブックを社内に共有する直前、必ずやることは?
正解:中身の見直し。共有すると、中の資料も相手が見られる状態になります。とくに「自分用に作ったものを、あとからチームに共有する」ときが危険です。共有直前の確認を、運用ルールにしてください。

このシリーズの進み方(全15回+番外編)

1回あたり10〜15分、上から順に積み上がる設計です。整える→頼む→読ませる→書かせる→調べる→作る→任せる→広げるの順で進みます。

テーマこの回で手に入るもの時間
第1回Geminiの基礎Googleとつながったワークスペース15分
第2回伝わる頼み方材料を名指しするプロンプトの型10分
第3回ドライブ横断の資料分析探さずに、まとめて要点化する15分
第4回Gmail連携のメール術受信トレイを離れずに返信を終える10分
第5回Deep Research出典つき調査レポートと、裏取りの手順15分
第6回スプレッドシート分析関数を書かずに集計・グラフ化10分
第7回画像・動画の制作POP・バナー・短尺動画の内製化15分
第8回会議の準備と議事録カレンダー連携と、録音→決定事項10分
第9回タスク自動化定型処理を書かせて消す15分
第10回Canvas会話ではなく“編集画面”で仕上げる10分
第11回Gemini Notebook(この記事)自社資料だけで答える社内辞書15分
第12回Gemの量産役割ごとのAI担当者を並べる10分
第13回Workspace展開チーム全員の標準にする設定と権限15分
第14回高度なプロンプト自分で考えさせる指示の組み立て10分
第15回フルワークフロー1〜14をつないだ完全AI自動化システム15分
番外編総括/セキュリティ情報漏洩・コンプライアンス・社内規程の型15分
COMPLETE

最後まで読んでくれて、ありがとう。

上のチェックを埋めていくと、進み具合がここに出ます。全部でなくて大丈夫。1つでも実際にやった人から、確実に変わっていきます。

0 / 6 ステップ完了
🎓 第11回の宿題

この記事を閉じる前に、今月3回以上聞かれた話題で、ノートブックを1つ作ってみてください。それだけで第11回は合格です。資料が無ければ、ベテランの話を30分録音するところから始めてください。次の第12回では、「役割ごとのAI担当者を並べる」 Gemの量産を扱います(所要10分)。

無料AI化診断

知識は、会社に残せる。
次は、あなたの会社の属人化を解きませんか?

「どこから手をつければいいか分からない」で止まっている方へ。まずは無料のAI化診断から。Googleフォームで数分、あなたの会社に合うAIの使いどころが見えてきます。

所要時間は数分です。スマホからそのまま回答できます。